2021年6月4日、THE COACH ICP初となるオンラインイベント「THE COACH ICPプロコース卒業生が語る『これからの自分と周囲との向き合い方』」が開催されました。3週に渡って行われる本シリーズの初回は「”人を活かす”コーチングとは」。250名以上の方にご参加いただき、大盛況のイベントとなりました。
このnoteでは、プロコース第1期卒業生の本橋さん・仁志出さん・高木さん・THE COACH代表こばかなによるトークセッションをダイジェストでお届けします。
<登壇者プロフィール>
3名の登壇者とコーチングとの出会い
こばかな:本日は皆さまに、コーチングを組織や他者にどのように活かしていくか、というところを中心にお話しいただければと思っています。まずは皆さんがコーチングを学ぼうと思ったキッカケをうかがいたいのですが、いかがでしょうか?
仁志出:僕の場合は、THE COACHのメンバーである、友人の岡田さんに誘われたのが大きなキッカケでした。僕は学生のときから10年ほど事業をやっていて、メンバーとの面談やキャリア教育を行う中で「仁志出さんってナチュラルにコーチっぽいですよね!」なんて言ってもらうことも多くありました。でも、自分自身はコーチングについてあまりよくわかっておらず、岡田さんから声をかけていただいたことをキッカケに、基礎からしっかり学んでみようかなと。
本橋:僕がコーチングを学ぼうと思ったのは大学2年生の後半、ファーストフード店でアルバイトをしているころでした。僕が働いていた店はグローバルに展開していたのでオペレーションの国際大会なるものがあって。そこに出場する後輩に指導をしていたときにふと、「自分がトレーニングをしても、彼は自分と同じレベルまでしか成長できないんではないか」と思ったんですよね。
ネットで「コミュニケーション 最大化」みたいなキーワードで検索してみたときに、目に留まったのがコーチングした。それからコーチングについての本を買って、独学で学びながら実践を繰り返していきました。最終的に、僕が指導を担当していた後輩はアジア大会のチャンピオンになりました。
相手の心の奥にある感情に触れ、可能性を引き出すコミュニケーションを取ることによってパフォーマンスが上がる経験をして、「コーチングには可能性しかない」と感じました。その後、社会人になったタイミングで体系的な勉強を始めましたね。
こばかな:本橋さんはまさに、人を活かすためにスタートした旅路だったんですね。
高木:わたしは「コーチングを学ばないとダメかもしれない」という藁にもすがるような思いでした。
2017年に会社を立ち上げて、結婚や出産を機に1度仕事を離れた方でもキャリアを再構築できるような環境を作ろうと奔走してきた数年間。はじめは就業規則、雇用契約の仕組み、会社の制度というハード面に力をいれてメンバーに”動いてもらおう”としていました。
少しずつ仕組みが整っていく一方で、制度ではカバーしきれないメンバーの「不安」や「不満」といった感情を受け取ることを、私自身が拒絶するようになってしまい……。メンバーともなんとなく距離ができてしまったんですよね。もともと「地方で可能性を広げたい」と思って立ち上げた会社だったのに、今はわたしが皆の可能性を狭めているのではないかと感じて、自分自身もすごく苦しみました。
もう一度可能性に向き合うために他者とも自分自身とも向き合わなければと思い、これがヒントになるかもしれないと学び始めたのがコーチングでした。
THE COACH ICPの旅は「自分ととことん向き合う時間」
こばかな:皆さんコーチングには「出会うべくして出会った」という感じがしますね。ここからは、皆さんがコーチングと出会ってどうなったのか、THE COACH ICPでの旅は人生にとってどんな時間だったのかをうかがっていきたいと思います。
本橋:僕にとってTHE COACH ICPの旅は「自分とつながる時間」というのが一番いい表現なのかなぁと。本当は気づいていて、でも蓋をして通り過ぎていた過去の感情や感覚を、解き放ってつながれた経験になりました。思い出した、っていう言い方の方がもしかしたらしっくりくるかもしれないですね。
こばかな:思い出したということは、これまでは忘れていた?
本橋:そう、忘れていた過去の感覚を取り戻せた時間だったなと思います。コーチングというと対人スキルとして取り上げられがちですが、僕は「対人」の「人」は自分自身のことだと思っています。
THE COACH ICPの各コース、特にプロコースでは、すさまじいくらいの時間を費やして自分と向き合い続けて、自己との対話を繰り広げていくんですよね。その中で、「こんなことあったなぁ」「(過去の自分は)これを大事にしていたよなぁ」というものに出会えて「なんで忘れちゃったんだっけ」と思える感情に何度も出会えました。
こばかな:なるほど。胸にじんわりと届く深いお話ですね。仁志出さんはいかがですか?
仁志出:一言で表すなら「自分と仲間にとことん向き合った旅」だったなと思っています。一般的にコーチは、クライアントの気持ちや感情、いろんなものをくみ取って気づきを得るサポートをしますが、THE COACH ICPでは、授業を通してコーチ自身が自分自身の感情に気づいていくことを大切にしています。
特にプロコースではめちゃくちゃに自分と向き合います。もちろん楽しい未来も見ますし、見たくなかったような自分と向き合うこともある。始めは手探りな感じだけれど、コースを終えるころには「これまでに出会った自分も、すべて自分の中のひとつなのだ」と受け入れられるんですよね。
プロコースが終わった直後は「人間になりました!」って感覚で(笑)、細胞を分解していろんな発見をしていろんな自分に気づいて、またすっきりと自分に戻れた、という感じでしょうか。
高木:わたしにとっては、THE COACH ICPは自分にとって温かい居場所でした。プロコースの仲間になると2週間に1度顔を合わせるので、「ただいま」「おかえり」と言い合える、サードプレイスができるんですよね。
そして、通常のコーチングとは違って、THE COACH ICPでは誰もがコーチであり誰もがクライアントであるという関係性です。皆が自分をその場に出していくからこそ、自分も安心してありのままを出せる。それが積み重なっていく場でした。
自分と向き合おうとすると、今まで伏せてきたものが現れてくるので痛みも伴うんですよね。でも、日常で出会ったら目を背けてしまうようなことでも、仲間がいるから受け止められる。受け止められる自分の中にも居場所が見つかる、そんな旅路でした。
コーチングスキルはさまざまな方法で組織に取り入れることができる
こばかな:参加者の方からの質問にも、組織やマネジメント・経営の話が出てきていますね。コーチングを取り入れてから組織やチームにどのような変化が起きましたか?
仁志出:コーチングを学び始めてコーチと上司というふたつの役割を持ったわけですが、会社でコーチングをすることにはジレンマのようなものがありました。THE COACH ICPで学び始めた当初も、「二つの役割を両立するのは難しいだろう」と、コーチングの取り組みは会社では行っていなかったんですよね。
ですが、あるときふと「やってみようかな」と思い立って社内で試してみたら、案外良かった。それまでは目の前の課題をどう解決するかというロジック寄りの話ばかりしていましたが、コーチング的なコミュニケーションを取ることで、メンバーにも「感情とか価値観とか、いつもは考えていない気づきや視点が得られてよかったです」と言われるようになって。シンプルに、メンバーとの関係性も良くなっている気がします。
本橋:僕も、上司が部下に対して純度100%のコーチングをするのは難しいと思っています。関係値や役職によっても違うとは思いますが、KPIや目標のある緊張した状況の中で「どんな感情がある?」と言われても、「感情もなにも、頑張るしかないじゃん!」と思われてしまいそうですからね(笑)。
だから、組織においては「コーチング的なコミュニケーションを身につける」という言い方の方がしっくりきます。普段のビジネスシーンのコミュニケーションの中に、「今感じていることを教えて」「どういう風にそれを考えていこうか」というコミュニケーションを取り入れられれば、ロジックだけでないアプローチのできるいい上司が増えるのだろうなという気がしています。
仁志出:携わっているプロジェクトの中にメンバーの半数がコーチングを学んでいるチームがあるのですが、やっぱり空気は全然違います。皆すごく相手の可能性を信じているし、なかなか発言しない人がいれば「どう思いますか?」と拾いに行く。そういうところに、メンバーがコーチングを学ぶ良さが出ると思いますね。
高木:雰囲気は本当に良くなりますよね。一方で、本橋さんが言っていたような上司が部下にっていうコーチングの関係って本当に難しいなとも思っています。
わたしは今「取締役」という肩書なので、こちらが対等な関係を築こうとしても相手が身構えてしまう。だからわたしは、会社ではあえて「コーチ」と「クライアント」という試みはしませんでした。
でも、コーチング自体がチームにとっていいものだということも知っている。どうやって広げていこうかなと考えて、まずはコーチングについての勉強会を開き、互いに傾聴しあう場を設けました。その勉強会の感触がよかったので、コーチングをやりたい人を募って半年くらい実践的な講座をやって。今は社内に20人のコーチが生まれています。
本橋:すごい。社内で本当に実践されているんですね。
高木:THE COACHに背中を押してもらいました。その取り組みの中で、目線が近いからこそできる関係性も生まれ、学んだことをどうやって誰に届けたいかを一人ひとりが自然に考えるようにもなりました。そして次第に、コーチングマインドを社内だけではなく地域にも届けたいとなり、今では行政と連携して「長野県100人コーチングプロジェクト」を実施するにいたりました。
コーチングといえば1対1のセッションというイメージがあり、それってハードルが高いんですよね。ですがたとえば、会議を「チェックイン」という手法から始めてみたり、相手の可能性を信じるところをベースに関わったりと、仕事の中にTHE COACHで学んだことを少しずつ取り入れていくことでそのマインドは広がっていくのかなと思っています。会社や相手に合わせたいろんな実践の仕方がありそうですよね。
プロコースを通して感じられた”自己の器”の変化
こばかな:プロコースでは、内省を中心とするワークを行う時間が15時間あり、5ヶ月に渡って取り組んでいきます。応用Bコースまででインプットのほとんどを終え、プロコースではとにかく自分自身と向き合い”自己の器”を育む期間となっていますが、皆さんにとってはどんな5ヶ月間でしたか?
本橋:プロコースの期間は、向き合いたくない感情や避けておきたかった感情ととことん対話をした時間だったなと感じています。というのも、実はプロコースが始まったばかりのころに転職をしたんですよね。入社直後に当初想定していた業務内容と乖離があることに気づき、「果たして自分はこのままここにいて幸せなのか?」と思うようになっていました。
でも、短期離職をしたら家族や仲間にどう思われるんだろう。そう思って「このままでいい。今がこうなだけで、この先きっとチャンスがある」と自分に言い聞かせていました。そのことをプロコースのセッションの中で開示したら、「本橋さんは本当に、自分の大切な家族や仲間が本橋さんに批判的な感情抱くと思ってるんですか?そうだとしたら、その人たちに失礼じゃないですか?」って言われて。
そのときに、自分が作り上げていたものが虚像だったと気づけました。「短期離職したら周りにどう思われるか」ということしか考えられないくらい視野が狭くなっていたけれど、THE COACHの仲間からの言葉で俯瞰的な視点を持てたんですよね。それでわずか1ヶ月で退職に踏み切り、今は新しい環境でとても楽しく働けています。
だから、プロコースの仲間のおかげでここにいられるし、プロコースがあってすごく良かったなと思っています。
高木:その過程を近くで見ていたので、前後での本橋さんの変化はすごく感じていましたね。その姿がまた、皆に影響を与えてくれていたとも思います。
仁志出:じんわりと温かい気持ちになりますね。今高木さんが言っていたように、自己の変容だけではなく、仲間の変容を近くで見られる、たとえば受講生が9人いたとすると9人分を見られるというのが、心強いし良かったですよね。
こばかな:ちなみに、本橋さんはプロコースまで受講して感じた変化をお話してくれましたが、基礎コースだけでも変化は感じられましたか?
仁志出:そうですね。僕はTHE COACHの受講前からコーチングについてある程度学んでいたので、正直「どうかな」と思っていた部分もありました。ですが、基礎コースでしっかり学んだことによって、今まで80%だった理解度が120%になったような感覚があります。コーチングにおける基本的なインパクトは基礎コースでも十分感じられましたね。
僕の場合は、始めはプロコースまで行こうとは思っていませんでしたが、基礎コースでの衝撃があったから「もっと学びたい」と感じることができ、プロコース卒業まで辿り着けたのかなと。
高木:わたしも仁志出さんと同じようにTHE COACH ICPに入る前からコーチングを学んでいて、「コーチたるものこうあらねば」というものがあったんですよね。
THE COACH ICPで教わったのは「コーチングって楽しんでいいんだ」ということ。スポーツのように学ぶ、失敗してもOK、どんどん経験を積んで行こう……そういうTHE COACHのマインドがあったからコーチングにもいろんな在り方があっていいと思えましたし、本当にその影響は大きかったです。
THE COACH ICP卒業生が考える「わたしにとってのTHE・コーチ」
こばかな:では皆さんに最後の問いです。広い捉え方ができる質問なので、浮かんだことを場に出していただくだけでも構いません。あなたにとっての「THE・コーチ」とはなんでしょうか?
本橋:自分自身の在り方を思い出して巡り合えて、それを自分の生き方・人生における哲学にまで落とし込んでいる人です。僕は本当にTHE COACH ICPでの経験が人生の大きな分岐点になりました。
今まで見て見ぬふりをしてきたものと向き合って、蓋をしてきた感情を感じ、対話してみる。そして、それらが自分の人生の一部であることを自分の中で受け入れて、「こいつとどうやって上手くやっていこうかな」と思えるようになりました。それを自分の人生に落とし込んで自身がついた、という思いが一番強いですね。
こばかな:ありがとうございます。仁志出さんはいかがでしょう。
仁志出:僕にとっての「THE・コーチ」は、これからの人間が大事にしたいなにかを育むもの、という感じがしています。人の可能性を信じたり、一緒に未来を描いていったり、今は見えなくてもそれらに一緒に踏み込んでみたり。
僕はもともと、挑戦している人を応援したいと思って起業をしています。だから、コーチングを通して人の可能性が引き出され、その人自身が自分の価値や感情に気づいて自分らしくなっていくのを見るのがすごく好きなんですよね。これから、コーチングマインドがわーっと広がって行ったらハッピーですね。
高木:お二人の話には大共感です。そのうえであえて一言でたとえると、「THE ・コーチ」とは願いである、というのが浮かんできます。一人ひとりのありたい姿、願いが未来にもつながっていくような。仲間と学び合う中でそれらがどんどん広がって、つながって、また温かい関係ができて……THE・コーチとはそういうものだというイメージが湧いています。
こばかな:ありがとうございます。心が温まりますね。こういう感覚になるのがコーチングだなと、セッションの度にわたしも感じています。
本日ご一緒した3名の卒業生の皆さんのことは基礎コースのときから見守らせていただいていましたが、その変容からはインドに行って帰ってきたみたいなインパクトを感じるほどです。全然空気感が違うというか、人生の充実に向かって行っていらっしゃるような、そんな感覚があります。
本日はそんな皆さまから素晴らしいお話をうかがえたこと、本当に感謝しております。ありがとうございました!
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第2回イベントは、6月15日(火)20:00~21:30に開催されます。
ご興味のある方は、下記URLよりお申込みください。