2022.07.12

「期待に応える」から「表現したいものを創造する」へ。人気漫画家の吉本ユータヌキさんがコーチングを学んで体感した変化

お子さんとのほのぼのした日々を描いた育児漫画で人気を博した、吉本ユータヌキさんをご存知でしょうか。

クリエイター活動の一環としてTwitterでも漫画を公開しており、2022年時点でフォロワー数は10万人超え。育児のこと、仕事での出来事、大好きなラジオのことなど、何気ない日常をコミカルに描いています。

https://twitter.com/horahareta13/status/1274903687089946626

多くのファンを持つ吉本さんですが、漫画家として作品を世に発表していく中で、他人の目を気にし、「周りの人の期待に応えないと」と楽しめなくなることもあったそうです。

しかし、とある出来事をきっかけにコーチングの考え方に触れ、THE COACH ICPの受講を通して自分と向き合う時間が増えたことで、発信のスタンスや作品として扱うテーマが変わってきたといいます。

吉本さんの中で、一体何が起きたのか——。今回のTHE COACH Jourenyでは、クリエイター・吉本ユータヌキさんに生まれた変化に迫りました。

吉本ユータヌキ
1986年生まれ、大阪出身 / 滋賀在住の漫画家であり、3児の父。18歳から8年間活動していたバンドが解散し、サラリーマンとして安定に歩み直した矢先に子どが誕生し、成長を残す意味で描き始めた漫画『おもち日和』で集英社より出版デビューすることに。2019年に会社員を辞め、2020年コルクに所属…と転がるような人生を送っている。無理しすぎない頑張りすぎないをモットーに、読む人の肩の力が抜けるようなエッセイ漫画を描く。

もともと「他人の目を気にしやすいタイプ」。読者の反応が自己否定につながることもあった

——吉本さんは、長く漫画を描き続けているのですか。

昔から絵を描くことは好きでしたが、学生時代はバンドをやっていて、25歳までステージに立っていました。解散後もバンドを好きでいてくれる人に向けて情報を発信したい、とブログを書くようになり、その挿絵としてイラストを描くようになったんです。気づけばブログで漫画を描くようにもなっていました。

ブログは軽い気持ちで始めたのですが、イラストや漫画を入れることで、よりたくさんの人に読まれるようになり、次第に絵の仕事をいただいたり、SNSのフォロワーも増えたりしていきましたね。

——ブログが起点となって、イラストや漫画のお仕事につながったんですね。

そうですね。子どもが生まれたタイミングで育児漫画を描き始めたら、たくさんの人に読んでもらえて、共感してもらえて、連載になって、本になって……。流れるように「漫画家」になった感覚でした。

当時は、コンテンツへのアクセス数や、それがどのくらい拡散されたかが、自分にとってとても大切なことでした。音楽活動をやっているときもブログを書いているときも、受け手からどう思われるかは常に意識していたと思います。

自分のコンテンツが跳ねたら自分の価値を感じられて、いいねやPV(ページビュー)などの反応が薄いと、自分は面白くないのだと感じてしまう。読者からの反応や編集者からのフィードバックが、自己否定につながることもありました。

誰かからの反応や期待は励みになる一方で、裏切ってはいけないというプレッシャーにもなっていましたね。

自分にしかできない仕事を見つけるために、コーチングの道へ

——絵を描くことが好きだったはずが、仕事になったことで純粋に楽しめなくなってしまったご自分もいたということでしょうか?

そうですね。転機になったのは、2020年頃。コロナをきっかけに仕事が減り、「今までは子どものエッセイ漫画を中心に描いてきたけれど、創作漫画を描いてみよう」と思うようになったことです。

それで、とあるクリエイターエージェンシーに参画したのですが、”どうしても周囲と同じだけの熱量を持てない自分”に気づいてしまって……。みんなは「一流の漫画家になりたい」と情熱をもって必死に頑張っているのに、自分はそこまでの熱量を持てなかったんです。

自分の作品は面白くない。みんなと比べて絵が上手くない。そんな風にネガティブにとらえることが多くなり、しんどくなっていきました。編集者からもらう「どうしてこれを描いたの?」という単なる質問にも、自分を否定されたような気持ちになって……。次第に「編集をしてくれる人の中にある正解」に寄せた漫画を作るようになっていきました。

あるとき、「もっと主体的に、吉本さんが描きたいことを漫画にしてほしい」と指摘を受けました。それで、今までずっと誰かの期待に応えるために作品づくりをしていたと気づいたんです。

——それは大きな気づきと言えそうですね。

ただ、「本当に自分が描きたいものは何か」と言われると、何も思いつかない。自分の方向性に迷っているときに、その編集者の方から紹介されたのがコーチングでした。

実際にコーチングを受けてみると、今までなんとなく感じていたことがクリアになってくる感覚があって、純粋に「これはすごい」と思ったんですよね。

——なるほど。実際にコーチングを受ける中で、その効果を感じられたんですね。そこからどのようにTHE COACH ICPへ?

コーチングを受ける中で、「他人の目を気にしすぎていた過去の自分、自分と似た境遇の人たちに向けて、何かを届けたい」という願いに気づくようになりました。

これまでは漫画というツールで発信をしてきましたが、僕は「漫画家」という肩書にはこだわりがなく、漫画はコミュニケーションの手段のひとつに過ぎません。

伝える方法は漫画だけではないのではないか?コーチングを受ける中で見つけた「共感性」という強みを生かしてコーチになるという道もあるのではないか?考えるようになったんです。THE COACH ICPでコーチングの考え方を学ぶことで、自分の強みを見つけ、「自分だけができる仕事につなげたい」と思い、THE COACH ICPの受講を決めました。

コーチングを学んでから、自分の中に残っていること

——THE COACH ICPを受講をする中で、印象に残っていることはありますか。

「今ここ」という考え方は、全体を通して講師の方から頻出したお話だったと思います。これは僕の中に今も残っている大事な考え方です。

たとえばTHE COACH ICPを受講したてのころ、自分のことを話題にする際「ネガティブな性格だからこう捉えてしまうのかもしれないのですが……」と、枕詞のように話していました。この性格は決して変わるものではない、と過去にとらわれている状態だったのだと思います。

ですが、「今ここ」にフォーカスすることで、過去ではなく「今の自分」と「この先どうありたいか」を意識できるようになる。「ネガティブな性格」と考えていたことも、「今自分はネガティブに捉えているんだな」と良い意味で他人ごとのように考えられるようになりました。

——今この瞬間やその先に意識が向くようになったんですね。

そうですね。今ここから変われるんだと思えるようになると、SNSでの発信のスタンスも変わってきました。

コーチングを学ぶ前までは、自分の中で完璧に近いと思える作品しか世に出せませんでした。しかし、今の自分が正解だと思えるものを発信できるようになって、SNSが「今この瞬間の作品」を伝える場所、「試す場所」になったんです。
ラフに仕上げたものや曖昧なものを出しても、それが一世一代の発表というわけじゃない。気に入らないところを見つけたら、修正すればいい。SNSが「発表の場」ではなく、「今の自分ができることを試す場」に変わったのは、自分の中で大きな変化だと思っています。

▲コーチングに関する発信の頻度も高くなった(https://twitter.com/horahareta13/status/1487990191243825156

内面に向き合う時間が増えて、「今ここ」に集中できるように

——SNSでの発信のスタンスが変わったということでしたが、その内容にも変化があるように思えます。

そうですね。いまはイラストや漫画、音声コンテンツなどのさまざまな形でコーチングについて発信しています。以前との変化は「結論が固まっているかどうかに関わらず、今考えていること」を発信している、というところでしょうか。

コーチとしてクライアントと向き合う活動も始めて、「コーチングとは何か」の理解をさらに深めている最中です。今は、コーチングの考え方が自分の中にじんわり浸透している期間なのかなと思っています。

——クリエイターとしての仕事や生活での変化はありましたか。

最近は1日の使い方をより意識するようになりました。朝にその日のやることリストを作って「絶対やるべきこと」「時間が空いたらやること」「未来の自分のためにやったほうがいいこと」などに分けています。

……というと、単なる「仕事上の変化」に聞こえると思うんですが、これができるようになったのはこれからやろうとしていることが自分のためか、他人の期待に応えるためなのかを見定められるようになったからこそなんです。

また、内面と向き合うことが習慣になり、自分の感情の揺らぎにも敏感になりました。たとえば、「このタスクを後回しにしたらこの後モヤモヤするんだろうな」と、自分の中に起きる感情を予測できるようになり、仕事のタスクや洗い物など先にやってしまったほうが良いことはすぐに終わらせるようになりました。

一つひとつは小さなことかもしれませんが、コーチングを通して自分と向き合えたからこそ生まれた変化だと思っています。

——最後に、これからクリエイターとしてやってみたいことを教えてください。

「楽に生きられる漫画」を描いていきたいと思っています。たとえば、屋外の音楽フェスで、後ろの方でシートを広げてお酒を飲みながらゆるっと音楽を聴いているみたいな、そんなありかたを伝えられるような漫画です。

——音楽フェス?

そうです。フェスの最前列って、大きな声を出すとか、腕を挙げるとか「こう盛り上がろう!」みたいなルールがあるじゃないですか。もちろん強制ではないんですけど。そんな一体感も好きではあるのですが、後ろの方にいる人は、自分なりの楽しみ方を持っている。

好きな食べ物をつまみながら聞いてもいいし、好きな曲が流れたらシートの上で立ち上がってもいい。最前列に行くこともできる。そんな風に、自分の生き方は自分で選べるんだよと伝えられるような漫画を描いていきたいと思っています。

あとは、コーチングを通しての自分の変化も、漫画で伝えていきたいですね。

コーチングに出会う前の僕は、他人を意識しすぎて肩の力が入っていました。いま同じ境遇にいる人が、ちょっと肩の力を抜けるような、「私も変われるんだ」と前向きになれるような、そんな情報や体験談を届けたいと思っています。

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