2023.06.27

お悩み相談付き!漫画家・吉本ユータヌキさんと考える“気にしすぎな人”が生きやすくなるヒント

ちょっとしたミスで「自分なんてだめだ…」と責めてしまったり、友人や仕事仲間からのちょっとしたひと言が「あれはどういう意味だったんだろう…?」と頭のなかをグルグルしてしまったり。

そんな“気にしすぎな漫画家”吉本ユータヌキさん。自らがコーチングを受けるなかで少しずつ「自分の本当の気持ち」や「考え方のクセ」に気づき、生きづらさが解消されていく様が描かれた著書『気にしすぎな人クラブへようこそ 』が発売されました。

今回は、「THE COACH ICP」の受講生でもあるユータヌキさんと共に、“気にしすぎな人が生きやすくなるヒント”を探っていきます。THE COACHのコーチ陣と共に、たくさんの“気にしすぎな人”からのお悩み相談にもお答えしました!

※こちらのnoteは、2023年3月25日(土)に開催された吉本ユータヌキさんとのコラボイベントの内容の一部を再編集したものです。ファシリテーターは、THE COACHの本橋 萌が担当しました。

〈登壇者プロフィール〉

吉本ユータヌキ
1986年生まれ、大阪出身 / 滋賀在住の漫画家であり、3児の父。18歳から8年間活動していたバンドが解散し、サラリーマンとして安定に歩み直した矢先に子どもが誕生し、成長を残す意味で描き始めた漫画『おもち日和』で集英社より出版デビューすることに。2019年に会社員を辞め、2020年コルクに所属…と転がるような人生を送っている。無理しすぎない頑張りすぎないをモットーに、読む人の肩の力が抜けるようなエッセイ漫画を描く。
Twitter:@horahareta13

株式会社THE COACH代表取締役 岡田裕介
新卒でパーソルキャリアに入社後、転職支援・採用コンサルティングに従事。その後、オルタナティブスクールを運営する教育系の社団法人を共同設立、副代表理事に就任。独立後は、認定プロフェッショナルコーチとして、スタートアップ企業の経営者・CxO・マネジメントクラスを中心にコーチングを提供。その他、自治体と提携したローカルベンチャー支援事業に従事。THE COACH創業期に取締役として就任。主にコーチング理論の確立やカリキュラムの研究開発を管掌、THE COACH ICPを開発。2022年10月より代表取締役。その他、茶道裏千家にて茶の湯とコーチングの交点を探究。
Twitter:@YusukeOkada_07

株式会社THE COACH 本橋 萌
東京都出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科卒業。株式会社博報堂などを経て現職。現在は総合シンクタンクで新規事業の開発を行いながら、株式会社 THE COACHで講師やカリキュラム開発に従事するなど、コーチングの魅力を広める活動を積極的に行なっている。慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究所 研究員。北陸先端科学技術大学院大学 博士後期課程 在学中(Knowledge Science)。専門分野はリフレーミング、コーチング。

“気にしすぎな人”だから描けたもの

ーー約3年前からコーチングを受けはじめたユータヌキさん。この度は書籍の出版おめでとうございます!コーチとの対話の記録が本になるまでの経緯をお聞かせください。

ユータヌキ:僕はもともと結構ネガティブな人間で、たとえば自分が描いた漫画に対して否定的な意見やフィードバックをもらうと、まるで自分を否定されたかのように落ち込んでしまっていました。

それが積もり積もったのが3年ほど前。好きだったはずの漫画を描くことすら「嫌だ」と感じていました。そんなタイミングで、紹介を通じてコーチングを受けるようになったんです。

コーチングを受けていると心が軽くなるような体験をして。自分の人生は後悔だらけだと思っていたけれど、その後悔があるから今の自分がここにいるんだと、当時35歳にして初めて思えるようになりました。

気づけてよかったけど、「あと10年早くコーチングに出会えていたらなあ」とも感じて。それなら、10年前の自分に贈る気持ちで漫画を描こうと思いSNSに投稿をはじめました。それを見た出版社の人から声をかけていただき、本になることが決まったんです。

ーー書籍の中には、思わず共感してしまう“気にしすぎ”エピソードと共に、それをゆるやかにほぐしてくれるようなコーチとの対話がたくさん記録されていますよね。ユータヌキさんが「後悔があるから今の自分がいる」と感じられるようになったのは、どうしてなのでしょうか?

ユータヌキ:コーチングの考え方を知れてよかったはずなのに、「10年早く知れていたらよかったのに…」とまたネガティブ思考がすぐ出てきてしまうんですよね(笑)でも、それをコーチに伝えたら「10年前にコーチング受けてたら今この漫画描けていないんじゃないですか?」と問いかけられて、たしかにそうだなあと。

気にしすぎな人だからこそ、人に優しくできたり、実体験を綴った漫画に共感してもらえたりする。妻と結婚できたのも、僕のこういう性格を好きになってくれたからかもしれません。そう思うと、ネガティブなのは別に悪いことじゃないじゃん!って肯定できたんです。

岡田:僕は「起こるすべてのことに意味がある」と思っていて、一見自分にとって好ましくない体験だとしても、あとから振り返ってみると、自分を形成する大きな気づきをもたらしてくれたりするんですよね。ネガティブな感情自体には良いも悪いもないんだなあと、聞いていて改めて感じました。

相手を喜ばせようとしなくていい。コーチングは、思うままに話せる特殊な時間

ーークライアント体験からはじまり、「THE COACH ICP」でコーチングをする側も体験いただきました。コーチングのどんなところに魅力を感じたのでしょうか?

ユータヌキ:これまでの人生で「いま何を感じていますか?」と聞かれることがなかったし、ちょっと宗教的な感じがして、最初は正直すごい違和感がありました。コーチングセッションの時間すら、コーチの顔色を気にして、コーチが喜びそうなことばかりを言ってしまって…。全然本音を出せていなかったんです。

でも、1年くらい継続してみると、毎週僕の話を聞くためだけに時間をつくってくれて、真剣に話を聞いてくれるコーチという存在のありがたみを感じるようになったというか、純粋にすごくうれしく感じるようになりました。「この人になら本音で話しても大丈夫かも」と、コーチやコーチングというものを信じてみようと。

それで、クライアントとして継続して受けるのと同時に、自分もコーチングというものを学んでみようと「THE COACH ICP」を受講しました。

ーー実際に学んでみていかがでしたか?

ユータヌキ:コーチ役を実践してみて感じたのは、コーチは本当に純粋にクライアントの気持ちを知りたいと思っていることです。

僕は相手を喜ばせるために言葉を選んでしまうところがありました。でも、コーチが聞きたいのって相手のための答えではなくて、自分の本音や自分のための答えなんですよね。

クライアントである僕がコーチを喜ばせようと取り繕っても、コーチは全然うれしくない。僕がただ思うままに話すことが許されるのがコーチングという時間で、むしろそのほうが結果としてコーチも喜んでくれるんだと、ちょっとずつ気づいていきました。

ーーコーチ役も経験してみることも、コーチングを理解する上ではすごく重要ですよね。現在では、得た学びをどんなふうに活用していますか?

ユータヌキ:特に子育ての場面では「ちゃんと子どもの話を聴けているか」を意識するようにしています。あとは先ほどお話ししたように、子どもの言動に対して善悪を決めつけないように心がけていますね。

あとは、他の受講生の皆さんは「コーチの帽子を被る」という表現をされます。つまり、「今ここからは、コーチの役割を担う」という意味合いかと思うのですが、僕の場合は「THE COACH ICP」を受講したあとは、ずっとその帽子を被り続けているような感覚なんです。

人と話すときは「いまどんなことを感じてますか?その気持ちは?」と相手の心にフォーカスすることが癖になってしまって。ある意味、軽い雑談が下手になりましたね(笑)

“気にしすぎな人”からのお悩みに答えました!

ここからは事前に募集した“気にしすぎお便り”の中から、3つピックアップしお悩み相談に答えていきます。

お悩み①愚痴や不満を耳にすると、自分も言われているんじゃないかとモヤモヤ

ーー1つ目は、人が愚痴や不満を言っているのを聞くと、「自分も知らないところで言われているのではないか」とモヤモヤするというお便りです。

岡田:僕もモヤモヤしてしまうのですごく共感します。コーチングや心理学的な視点で答えてみるとすると、事実と解釈を分けて考えてみるのが良いかもしれません。

事実をそのまま受け取ってみると、ただその人が愚痴や不安を言っているだけで、あくまで自分に向かって言っているわけではありません。「自分も言われているかもしれない」というのは事実ではなく解釈なんですよね。事実と解釈を分けてみるだけでも、少し気持ちが楽になるかもしれません。

お悩み②失敗するのが怖く、あとで後悔してしまう

ーー2つ目は、「失敗したらどうしよう」と尻込みしてしまい、あとからやらなかったことを後悔することが多いとのお便りです。

ユータヌキ:まるで僕からのお便りなんじゃないかと思ってしまいますね(笑)僕も自分が描いた漫画をSNSに投稿するとき、「あんまり反応がなかったらどうしよう。面白くないと思われたらどうしよう」と、毎回勝負をするような気持ちでアップしていました。中には怖くて投稿できなかったものもたくさんあります。

でも、いまは例え失敗したとしても、大きく失うものはないと気づいたんです。「なぜ失敗だと感じるんだろう?」と見直すきっかけにもなります。不安がゼロになることはないですけど、失敗してもそれはそれで何かしらの成長につながると思えるようになったんですよね。

岡田:失敗したらどうしようと不安になる事柄って、ある意味成果を出す可能性が高いんじゃないかと思います。不安になるということは、すごいこだわりがあったり、想いが強い証でもある。不安があるからこそ、よりブラッシュアップできたり、リスクヘッジとして機能してくれたり、チャレンジをより良くするための栄養と捉えることもできると思います。

ユータヌキ:たしかに、僕も失敗したらどうしようと思うときほど、何回も見直すようにしていて。テストも間違えたらどうしようと思うからこそ慎重になりますよね。不安自体が悪いものではなくて、捉えようによっては自分を救ってくれるものにもなると思います。

お悩み③自分にマイナスな言葉をかけて自信をなくしてしまう

ーー3つ目は、デザインのお仕事をしている方からのお便りです。「そんなこともできないの?」と自分にマイナスな言葉をかけてしまい、どんどん自信をなくなってしまう…と。

岡田:僕も自信をなくすことってたくさんあるんですけど、「なんでそんなこともできないの?」という声が自分の内側から失われると、その領域における成長は止まってしまうのではないかと思うようにしています。

裏を返せば「本当はこれくらいできるはずなのに」という想いがあるからこその葛藤な気がしていて。本来持っているはずの力と現実とのギャップは、まだそれだけ成長の余地があるということだと思っています。

ユータヌキ:人と比べるほど、自分ができないことって山ほど見つかってしまいますよね。僕も上手な絵が描けるわけじゃないから、「なんでこんなこともできないんだろう」と自信を持てなくなることがたくさんあります。

ただ、自分のすべての側面に自信を持つってそうそう難しいと思うんです。わかりやすいスキルや技術だけではなくて、自分は場を和ませる性質があるとか、いろんな観点から自分を眺めてみるのは何かヒントになるかもしれませんね。

岡田:例えば「コーチ」や「漫画家」「デザイナー」など、ある役割だけで自分自身をとらえると「あの人よりも上手にできない」と人と比べてしまうかもしれません。いわゆる相対評価という考え方ですね。

一方、「コーチ」ではなく「岡田裕介」として捉えると、僕は僕一人しかいないので人と比べようがない絶対的な存在なわけです。僕は、いまでも人と比べてしまうことは多々ありますが、「岡田裕介という人生を思う存分生きる」という意味ではすごく自信があるんですね。ちょっとわかりにくいことを言っちゃってますが(笑)

ユータヌキ:たしかに、無意識に他者と比較してしまうことと自信を失うことは、密接につながっている感じがしますね。でも、自分という存在だけを見ればそもそも比べるものが何もないというか。

たとえば、毎日「今日できたこと」を一つずつ書き残しておいて、それを100日つづけてみる。そうすれば、自分にできることは100個もあると実感できるし、しかも「100日つづけた」ということ自体が自信をもたらしてくれるかもしれません。

ーー「自分にとっての自信の定義って何だろう?」と問いを立ててみたり、小さなことでも「今日できたこと」を言語化したり、そういう積み重ねが結果として大きな変化をもたらしてくれるのかもしれませんね。

“気にしすぎ”は強みに変えられる

ーー皆さん、たくさんのお便りをありがとうございました!ユータヌキさんから最後に“気にしすぎ”な皆さんへメッセージをお願いします。

ユータヌキ:“気にしすぎな人”という言葉を僕はネガティブな意味で使っているわけではありません。気にしすぎちゃうというのは、むしろ「気にすることができる」という特殊能力だと思います。

それだけ人のことを観察したり、思いやれる力を持っているわけですから、自分の悪い部分だと思わず、生かすこともできるんだと、自分の可能性の一つとして捉えてもらえたらうれしいです。

あとは、“気にしすぎな人”にこそコーチングを受けたり、学んだりしてもらいたいですよね。コーチングは正直そんなに安いものでもないですし、わかりやすい効果がすぐに得られるものでもありませんが、自分の気にしすぎな側面を強みに変える力があると思います。

(執筆:佐藤伶)

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▼吉本ユータヌキさんの「THE COACH ICP」受講後のインタビューはこちら

https://journey.thecoach.jp/n/n11444c6f7942

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