こんにちは、THE COACHです。
近年コーチングは、マネジメントの手法のひとつとしても注目されています。THE COACH ICPを受講してくださる方、説明会に足を運んでくださる方の中にも「自身のマネジメントに活かしたい」とお話してくださっている方は多くいらっしゃいます。
一方、なぜマネジメントにコーチングの考え方が重要なのか、ビジネスシーンにコーチングを導入することでどのようなメリットがあるのかについては考えたことがない……という人も少なくないかもしれません。
本noteでは、「コーチングの手法を活かしたマネジメント」をテーマに、コーチングマネジメントが必要になった背景、マネジメントに活かせるコーチングの考え方について解説します。
これまでのマネジメントだけでは通用しなくなった現在の組織
そもそも、どうしてマネジメントの手法として「コーチング」という新しいスタイルが注目を集めているのでしょうか。それは、時代の変化に伴い、これまでのマネジメントの手法だけではチームとしての成果を出すことが難しくなってきているからです。
働き方・生き方が多様になり、「個」と向き合う必要が出てきた
現代は、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれる先行きの不透明な時代です。
VUCAとは
の頭文字を取って2010年代に使われ始めた言葉ですが、新型コロナウイルスの出現やテクノロジーの急激な進化などにより、先行きの不透明性・不確実性は近年さらに大きくなっています。
未来をある程度予測できた時代には、「家庭を持ったら家を建てる」「入社した会社では定年まで勤めあげる」のように、生き方・働き方に、ある種の「スタンダード」が存在していました。
しかし、先行きの不透明なVUCA時代、誰にとっても同じ正解は存在しなくなり、一人ひとりが「自分はこの生き方・働き方で良いのだろうか」と個としての人生を考えるようになりました。その結果、より自分の居心地の良い環境を求めて住む場所を変えたり、転職を重ねたりするケースも一般的になってきています。
これまでのマネージャーには、ビジネスの場でメンバーが正解や成功に向かうための画一的なサポートが求められてきました。
しかし、生き方が多様になり正解が存在しなくなった今、個と向き合い、一人ひとりのありたい姿を理解した上で、その人らしさを引き出す力が求められるようになってきているのです。
組織として、複雑性の高い問題を扱わなければならなくなった
かつての日本には、モノを作れば売れる時代がありました。当時は、「大量生産」が日本経済を成長させていくための正しい道とされ、それをいかに早いスピードで実現させるかが求められていたのです。
一方、VUCA時代の現代、顧客のニーズは多様化し、「売上を作るためにはこの方法が良い」という正解はなくなっています。さらに、インターネットやテクノロジーの発達に伴い、業界内の変化のスピードも速くなっています。言い換えれば、誰も経験したことのない、複雑性の高い問題に向き合わなければならない場面が、数多く訪れているということです。
それらを解決するためには、過去の正解を参考にした「A or B」ではなく、まったく新しいC、D、Eという解を導く必要があります。そして、その解を導くためには「マネージャーの中にある知識や技術を用いる」だけでなく、メンバー一人ひとりが自分なりの問いを持ち、考え、行動に移すことが必要です。
これまでのマネジメントだけでなく、「コーチングの手法を活かしたマネジメント」を適切に用いることで一人ひとりがポテンシャルを発揮できる環境が育まれ、組織として、複雑性の高い問題に立ち向かっていくことができるのです。
パーパスが重要視されるようになってきた
これまでのマネージャーには、売上・利益向上という明確な目標を達成するために、メンバーを指揮命令・管理する役割が任されていました。それに対し現代では、会社のパーパス(Purpose:企業の存在意義)が重要視され、マネージャーにはパーパスの追求のために能力を発揮することが期待されています。
ただ売上や利益を生むことを目指すのではなく、マネージャー自身が組織や自らの存在意義に向き合い、それを実現させるために最適な方法を考える。それこそが現代のマネジメントと言えるのです。
現代のマネジメントに生きるコーチングの考え方
では、コーチングのどのような考え方や手法が現代のマネジメントに生きるのでしょうか?具体例を見ていきましょう。
相手から主体性とその人らしさを引き出すコミュニケーション
良い組織を作るためには、「相手から主体性とその人らしさ」を引き出すことが大切です。これまでの指揮命令・管理を中心としたマネジメントだけでそれを叶えることは難しいため、主体性とその人らしさを引き出すコミュニケーションの取り方を知っておけると良いでしょう。
①傾聴
もっとも重要な事柄の一つが「傾聴」です。そもそも「聞く」とは、ただ音を「聞く」だけの行為ではありません。
「元気ですか?」と問いを投げかけたときに戻ってくる「元気です」という言葉の表層だけをとらえるのではなく、表情はどうか?声のトーンはどうか?続けて何かを話したそうな様子はあるか?など、相手の心や感情に好奇心を向けてみましょう。すると両者の間に信頼関係が育まれ、部下の声が本当の意味で聴けるようになります。
②意識の状態
THE COACHでは、人の意識の状態を「解釈モード」「直視モード」「感知モード」の3つに分けて考えています。
解釈モードは、相手の発話を聞いたうえで「この人は『わかりました』と言っているから、わかってくれたんだ」のように、自分の頭の中で解釈を行うモードです。
直視モードは、声を聴き、言葉を受け取ることに加え「納得してくれていそうだな」「無表情だな」など、相手の位置情報をそのまま受け取るモードです。
感知モードは、相手を超えて、場の全体の雰囲気から相手が何を望んでいるかを感じ取るモードです。文字通り「感知」するような意識で相手の心を見つめます。
改めて、ご自身が同僚や部下とコミュニケーションを取るときに、意識の状態がどれに当てはまるか考えてみてください。解釈モードだった意識を感知モードに変えられると、相手の願いを受け取ることができ、主体性とその人らしさを引き出すコミュニケーションにつながっていきます。
部下や同僚とのパートナーシップを育む
ここまで、相手から主体性とその人らしさを引き出すためには、「傾聴」や「意識の状態」が重要であるとお話してきました。実はそれを支えているのが、相手と自分の間の強固なパートナーシップです。
さらに、パートナーシップをどのように育んでいくのかまで考えると「相手の可能性を信じて、ありのままのその人らしさを尊重するあり方」がポイントになります。
たとえば、部下から「こんな課題にぶつかっています」と相談を受けたとします。これまでのマネジメントにおいては、「Aをすると良い」「Bを試してみて」といったアドバイスをするケースが一般的でした。もちろん、アドバイスや指導が必要な場面もありますが、そればかりになってしまうと、相手の可能性が最大限に発揮される機会を、知らず知らずのうちに奪ってしまうかもしれません。
一方、マネジメントをする側が「相手を信じる」「その人の可能性を信じる」あり方でいられれば、部下や同僚は心理的安全性のある中で自分らしさを発揮できます。そしてのびのびと自分らしさが発揮できることで、上司への信頼感が生まれ、互いの間にパートナーシップが育まれていくことが期待できます。
自分自身のあり方と向き合い、「自分らしさ」を発揮する
最後にお伝えしたいのが、マネージャー自身が「自分自身のあり方」と向き合うことの重要性です。
①マネージャー自身も自己内省を行う
マネージャーは立場上、部下、自分の上司、会社など、さまざまな人の「ありたい姿」に触れなければなりません。ときには、会社のありたい姿と部下のありたい姿が正反対の位置にあるように見え、板挟みに感じられることがあるかもしれません。
だからこそマネージャー自身が「自分はこの事象をどう捉えたいか」という考え方を持ち、各所からの願いを統合しなければなりません。そのためにも、日常的に自己内省を行い「自分自身がどうありたいか」を問い続け、マネージャー自身が自分らしさを発揮することが必要なのです。
②葛藤を葛藤のまま持ち続ける
部下、上司、会社……それぞれの願いを統合しようとするとき、そこには必ず葛藤が生まれます。どれだけ丁寧に人の声を聴き、統合を試みようとしたとしても、生命体と生命体の目指すあり方を完全に一致させるのは難しいのです。
そんなとき、葛藤状態をすぐに解消しようとするのではなく、葛藤を葛藤のまま持ち続けてしまうことが大切です。葛藤状態は、会社のフェーズ・本人のフェーズ・部下のフェーズなどさまざまなものの状態が絡み合う中で、必要なときに自然とひとつにまとまっていきます。
葛藤状態をそのままにしておくことを許す。現代のマネジメントにおいては、そのような受容力が必要です。
コーチング手法を使って「取り組み続ける」ことが良いチームにつながる
上記に加え、マネージャーがコーチングマインドを発揮することで、コーチングマインドや「他者とかかわるときのあり方」が部下や同僚にも伝播していくという副次的な効果も期待できます。
ここまで、コーチングをマネジメントに活かす方法をお伝えしてきましたが、「これまでのマネジメントが不要」ということではありません。組織として利益を追求し、世の中に還元していくためには、指揮命令や管理も大切な要素となるからです。
今あるマネジメントの形を大切にしながら、そこにコーチングの手法を生かしたマネジメントを内包し、新しいマネジメントの形として進化させていく。それぞれの組織にとって、よりフィットした形になるように「取り組み続ける」ことこそが、良いチームを作っていくのではないでしょうか。
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